高齢化が進む日本で、デイサービスは将来性のある事業として注目を集めています。フランチャイズ本部の説明会では「6ヶ月で開業可能」「本部がサポートするから未経験でも安心」といった言葉を耳にすることも多いでしょう。しかし実際には、許認可取得のプロセスは想像以上に複雑で、準備期間は8~12ヶ月かかるのが現実です。中には許認可が下りずに開業を断念せざるを得なかったケースも存在します。
この記事では、デイサービスフランチャイズの許認可取得の難しさと実際の準備期間について、50名以上のFC加盟オーナーへの取材をもとに徹底解説します。成功例だけでなく失敗例も包み隠さず紹介し、あなたが開業前に知っておくべき「躓きやすいポイント」と「回避策」を具体的にお伝えします。
デイサービスの許認可が他業態より難しい5つの理由
デイサービスの開業は、飲食店や小売店などの一般的なフランチャイズと比べて許認可のハードルが高いと言われています。なぜこれほど難しいのでしょうか。まずは全体像を理解するために、5つの主な理由を見ていきましょう。
理由①法人格の取得が必須条件(個人事業では不可)
デイサービスを含む介護保険事業は、介護保険法により法人格が必須とされています。個人事業主としては開業できず、株式会社または合同会社などの法人を設立する必要があります。
法人設立には通常1~2ヶ月程度の期間が必要で、定款の作成や登記手続きを行わなければなりません。特に重要なのが、定款の事業目的欄に「介護保険法に基づく通所介護事業」を明記することです。この記載がないと、後から定款変更の手続きが必要になり、開業がさらに遅れることになります。
法人設立にかかる費用は、株式会社で25~30万円程度、合同会社で10~15万円程度が目安です。飲食店であれば個人事業主として保健所の許可だけで開業できることを考えると、この法人格取得というステップだけでも大きな違いと言えます。
理由②厳格な人員基準のクリア(資格者の確保が必須)
デイサービスでは、厚生労働省が定める人員配置基準を満たす必要があります。配置が必須となる職種は以下の通りです。
- 管理者:常勤で1名(他職種との兼務可)
- 生活相談員:利用者100名に対し1名以上(常勤換算)
- 看護職員:利用者定員に応じて配置(看護師または准看護師)
- 介護職員:利用者15名に対し1名以上
- 機能訓練指導員:1名以上(理学療法士、作業療法士、看護師など)
特に採用が難しいのが看護師と機能訓練指導員です。地域によっては求人を出しても応募がほとんどないケースもあり、「看護師が見つからず開業が3ヶ月遅延した」という事例も珍しくありません。都市部では競合が多く、地方では絶対数が不足しているため、どちらのエリアでも人材確保には苦労する可能性があります。
また、開業直前に採用予定者が辞退するというリスクもあります。人員基準を満たせない場合、許認可は下りないため、この人材確保のステップが最大の難関の一つとなっています。
理由③設備基準と物件探しの難易度
デイサービスの施設には、厚生労働省令で定められた設備基準があります。主な必要設備は以下の通りです。
- 食堂・機能訓練室:利用者1人あたり3㎡以上(定員10名なら最低30㎡)
- 静養室:個室または仕切りで区画された空間
- 相談室:プライバシーが確保できる個室
- 事務室
- トイレ:車椅子対応(手すり設置、十分な広さ)
これらを全て備えるには、定員10名の小規模でも最低100㎡程度の面積が必要です。さらに、建物全体をバリアフリー化し、消防設備(スプリンクラーなど)も設置しなければなりません。
物件探しで苦労するのが用途地域の制限です。住居専用地域では原則としてデイサービスの開設ができません。用途地域を確認せずに物件を契約してしまい、後から開業不可能と判明して数百万円の損失を被った事例もあります。
また、賃貸物件の場合、大家さんがデイサービス運営を嫌がるケースも少なくありません。「高齢者が集まる施設は不安」という理由で承諾を得られないこともあり、物件探しだけで5ヶ月以上かかったというオーナーもいます。
理由④都道府県・市町村の指定申請プロセスが複雑
デイサービスの許認可は、各都道府県または市町村(指定都市・中核市)が行います。ここで注意すべきなのが、自治体によって申請フローや必要書類が異なるという点です。
例えば東京都では事前協議が必須で、この段階で物件や人員配置について詳細な確認が行われます。一方で、事前協議が不要な自治体もあり、地域によって対応が大きく異なります。
また、多くの自治体では申請締切日が月1回のみに設定されています。例えば「毎月10日締切、翌月1日付で指定」といった形です。この締切日を1日でも逃すと、開業が丸々1ヶ月遅れることになります。
実地検査で設備の不備を指摘されると、補正工事が必要になりさらに遅延します。申請書類の不備があれば再提出となり、やはり開業時期がずれ込みます。このように、行政手続きのプロセスそのものが時間を要する仕組みになっているのです。
理由⑤初期投資額が大きく、失敗時の損失リスクが高い
デイサービスの開業には、1,000万~2,000万円程度の初期投資が必要です。内訳は物件の敷金・礼金、内装工事費、設備費、開業前の人件費、フランチャイズ加盟金などです。
問題は、許認可が下りる前に物件契約や内装工事を進めざるを得ないという点です。許認可取得には通常1~2ヶ月かかりますが、その間も家賃は発生します。人員も確保しておかなければならず、人件費も先行してかかります。
もし許認可が下りなかった場合、これらの投資は全て損失となります。実際に「物件契約後に用途地域の問題が発覚し、300万円を失った」「人員配置基準を満たせず、採用費と給与で500万円が無駄になった」といった事例も存在します。
飲食店であれば初期投資は500万円程度で済むケースも多く、許認可も保健所の許可のみで比較的シンプルです。それと比較すると、デイサービスは投資額が大きい上に許認可の不確実性も高く、リスクが非常に大きい業態と言えます。
許認可取得の全体フローと各ステップの所要期間
デイサービスの開業までには、どのようなステップを踏む必要があるのでしょうか。ここでは標準的な8~12ヶ月のスケジュールを、各段階の所要期間とともに解説します。
STEP1: 法人設立と事業計画策定(1~2ヶ月)
最初のステップは法人の設立です。株式会社か合同会社かを選択し、定款を作成して登記手続きを行います。この段階で1~2ヶ月を要します。
同時進行で事業計画書の作成も必要です。フランチャイズ本部がテンプレートを提供してくれるケースが多いですが、自分のエリアの市場調査や収支シミュレーションは独自に行う必要があります。
この時期に金融機関への融資申請も開始します。審査には1~2ヶ月かかることもあるため、早めに動くことが重要です。
注意点として、フランチャイズ契約の前に法人設立すべきか、後でよいかをFC本部に確認しましょう。契約のタイミングによって加盟金の扱いが変わる可能性があります。
STEP2: 物件探しと契約(2~4ヶ月)※最も時間がかかる難関
物件探しは、許認可取得プロセスで最も時間がかかるステップです。設備基準を満たす物件自体が少ない上に、用途地域の制限、大家の承諾取得など、クリアすべきハードルが多いためです。
まず市区町村の都市計画課で、候補物件の用途地域を確認します。住居専用地域の場合、特例許可が必要になるか、そもそも開設不可能かを事前に把握しなければなりません。
大家への説明も重要なプロセスです。「デイサービスを開きたい」と伝えると、高齢者が集まることへの不安から難色を示す大家もいます。丁寧に事業内容を説明し、理解を得る必要があります。
物件契約のタイミングも慎重に判断すべきです。理想は「仮契約→許認可取得の見込み確認→本契約」という流れですが、人気物件の場合はそう悠長に構えていられないこともあります。
内装工事には2~3ヶ月かかります。工事の遅延リスクも考慮し、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。実際に「物件探しだけで5ヶ月かかった」「10件目の物件でようやく大家の承諾を得られた」という事例は珍しくありません。
STEP3: 人材採用と研修(2~3ヶ月)
開業前に必要な人員は、最低でも5~7名程度です。管理者、生活相談員、看護職員、介護職員、機能訓練指導員を基準に沿って配置しなければなりません。
職種別の採用難易度は、看護師>機能訓練指導員>介護職員の順です。看護師は特に採用が困難で、求人を出しても応募がないことも多々あります。
求人媒体や人材紹介会社を活用すると、月10~20万円の費用がかかります。フランチャイズ本部が採用支援サービスを提供している場合は、積極的に活用しましょう。本部の紹介で看護師を確保できたというケースもあります。
採用活動では、「採用できない場合の撤退判断基準」を事前に設定しておくことも大切です。例えば「3ヶ月経っても看護師が見つからなければ一旦中断」といった具体的なラインを決めておくと、ズルズルと時間と費用を浪費せずに済みます。
STEP4: 自治体との事前協議(1~2ヶ月)
東京都や神奈川県など、一部の自治体では事前協議が必須となっています。この段階で、物件が設備基準を満たしているか、人員配置計画は適切かなどを確認してもらいます。
事前協議で指摘事項があれば、それに対応しなければなりません。「相談室の面積が不足している」と指摘され、間取り変更で1ヶ月遅延したという事例もあります。
事前協議が不要な自治体でも、任意で相談に行くことをおすすめします。申請書類の書き方や必要な添付資料について事前に確認できれば、本申請時のスムーズな審査につながります。
STEP5: 指定申請と審査(1~2ヶ月)
すべての準備が整ったら、いよいよ指定申請です。必要書類は自治体によって異なりますが、一般的には以下のようなものが求められます。
- 指定申請書
- 建物の平面図・設備配置図
- 職員の名簿と資格証明書の写し
- 運営規程
- 利用者からの苦情処理体制に関する書類
- 法人の登記事項証明書
申請締切日を必ず確認しましょう。多くの自治体では「毎月○日締切、翌月1日付で指定」という形式です。締切を逃すと1ヶ月丸々遅れることになります。
審査の過程で実地検査が行われる自治体もあります。実際に現地を確認し、設備基準を満たしているか、安全面に問題がないかなどをチェックされます。
補正指示があれば対応して再提出が必要です。書類の不備がないよう、FC本部や行政書士にダブルチェックしてもらうことをおすすめします。
審査を経て問題がなければ、指定通知書が交付されます。これでようやく開業が可能になります。
STEP6: 開業準備と利用者募集(1ヶ月)
指定を受けたら、実際の利用者を募集します。主な営業先はケアマネジャーです。ケアマネは利用者の介護プランを作成する専門職で、どのデイサービスを利用するかを提案する立場にあります。
開業時の目標利用者数は10~15名程度です。ただし実際には5名以下でスタートするケースも多く、満員になるまでには3~6ヶ月かかることもあります。
開業セレモニーや内覧会を実施すると、地域への認知度向上につながります。フランチャイズ本部がこれらのイベント支援を行っているケースもあるので、活用しましょう。
【実例】準備期間のリアル:成功・失敗パターン比較
理論だけでなく、実際のオーナーの経験から学ぶことは非常に重要です。ここでは、スムーズに開業できたケースと躓いてしまったケースを比較し、準備期間を左右する要因を分析します。
【成功例①】7ヶ月で開業:計画的準備が功を奏したAさん(40代・元会社員)
Aさんは元々営業職として働いていましたが、介護業界の将来性に魅力を感じてデイサービスFC加盟を決意しました。事前に法人設立を済ませていたことが、スムーズな開業の鍵となりました。
タイムラインは以下の通りです。
- 1~2ヶ月目:FC本部選定・契約、物件探し開始
- 3ヶ月目:FC本部推奨の物件リストから候補を選定、仮契約
- 4ヶ月目:人材採用開始、内装工事着工
- 5ヶ月目:看護師・介護職員の確保完了
- 6ヶ月目:指定申請
- 7ヶ月目:指定通知受領、開業
成功の要因は、事前の法人設立によるスタートダッシュ、FC本部の物件リスト活用、そして地域での人脈を活かしたケアマネとの関係構築です。資金的にも貯金2,000万円と余裕があり、焦らずに採用活動を進められたことも大きかったと言えます。
【成功例②】10ヶ月で開業:未経験でもFC本部サポートで実現したBさん(50代・元営業)
Bさんは介護業界の経験がゼロでしたが、FC本部の手厚いサポートを最大限に活用することで、標準的な10ヶ月で開業を実現しました。
特に助かったのは、本部の物件探し同行サービスと申請書類作成支援です。用途地域の確認から大家への説明まで、本部担当者が同行してくれたため、大きなトラブルなく物件契約まで進めました。
人材採用でも本部の紹介サービスを活用し、看護師を確保できました。未経験者にとって、このようなサポートの厚さは非常に重要です。
事前協議の段階で若干の指摘事項がありましたが、FC本部の助言のもとで早期にクリアし、大きな遅延には至りませんでした。
【失敗例①】開業断念:物件で躓いたCさん(30代・元介護職)
Cさんは介護現場での経験が5年あり、「現場を知っているから大丈夫」と自信を持ってスタートしました。しかし物件選定での失敗が致命傷となり、開業を断念することになります。
失敗の経緯は以下の通りです。
- 3ヶ月目:良い物件が見つかり契約直前まで進むが、用途地域が住居専用地域と判明し断念
- 5ヶ月目:別の物件を契約するも、大家が途中で翻意しデイサービス運営を拒否
- 8ヶ月目:資金不足により開業を断念
損失額は、法人設立費30万円、物件調査費・仲介手数料50万円、そして採用済みスタッフへの補償として100万円、合計約180万円に上りました。
Cさんの教訓は、物件契約前に用途地域と大家の承諾を確実に確認すべきだったということです。用途地域の確認は市区町村の都市計画課で無料で行えます。また、大家への説明は書面で行い、承諾書を取得しておくべきでした。
【失敗例②】開業1年遅延:人材確保で苦戦したDさん(40代・元看護師)
Dさんは自身が看護師資格を持っていたため、人材面では有利だと考えていました。しかし機能訓練指導員(理学療法士または作業療法士)の確保に想定以上の時間がかかってしまいます。
物件と法人設立はスムーズに完了しましたが、機能訓練指導員が半年間見つかりませんでした。求人媒体、人材紹介会社、知人への声かけなど、あらゆる手段を尽くしましたが、地方都市ということもあり応募がほとんどありませんでした。
採用費だけで150万円を消費し、ようやく非常勤のPTを確保できたのは開業予定日から1年後でした。この間も物件の家賃と、すでに採用していた他スタッフの人件費が発生し続け、空回りの損失は500万円に達しました。
Dさんの教訓は、採用難の職種は早めに着手し、場合によっては非常勤でも確保することです。また、「3ヶ月経っても見つからなければ一旦保留」といった撤退判断基準を設けておくべきでした。
FC本部サポートの有無で変わる準備期間
以上の事例から分かるように、FC本部のサポート内容によって準備期間は大きく変わります。
- サポートが手厚い本部:平均8~10ヶ月
- サポートが標準的な本部:平均10~12ヶ月
- サポートが少ない本部または独立開業:平均12~18ヶ月
手厚いサポートとは、物件の紹介・同行、申請書類の作成代行、人材紹介サービス、自治体との折衝同行などを指します。FC本部を選ぶ際には、単に加盟金やロイヤリティの金額だけでなく、これらの許認可サポートの具体的内容を必ず確認しましょう。
許認可が「取れない」「遅延する」7つの落とし穴
実際のオーナーたちが躓いたポイントから、許認可取得で失敗しやすい落とし穴を7つ紹介します。これらを事前に知っておけば、多くのトラブルは回避できます。
落とし穴①用途地域の確認不足
最も多い失敗が、用途地域の確認不足です。デイサービスは建築基準法上、「社会福祉施設」に分類されますが、住居専用地域では原則として開設できません。
ただし、建築基準法48条の特例許可を受けられる場合もあります。これは周辺住民の同意や、特定の条件を満たすことで認められるケースです。
回避策:物件契約前に必ず市区町村の都市計画課で用途地域を確認しましょう。確認は無料で、窓口に行けばその場で教えてもらえます。また、不動産業者に「デイサービス開設可能か」を明示的に確認し、書面で回答をもらっておくと安心です。
落とし穴②物件の設備基準不足
物件の面積や設備が、厚生労働省令の設備基準を満たしていないケースです。よくあるのが、以下のような不備です。
- 食堂・機能訓練室の面積不足(定員10名なら30㎡以上必要)
- 静養室、相談室の個室が確保できていない
- トイレが車椅子対応でない(手すり、十分な広さがない)
これらの不備は、内装工事が完了してから発覚すると、追加工事で大幅なコスト増となります。
回避策:物件の内見時にFC本部の担当者または建築士に同行してもらい、設備基準を満たすかどうかを事前にチェックしてもらいましょう。図面だけでなく、実際に現地で寸法を測ることも重要です。
落とし穴③人員基準を満たせない
開業直前に採用予定者が辞退したり、勤務時間が基準を満たさないことが判明したりするケースです。
例えば、看護師は週32時間以上の勤務が求められる自治体が多いのですが、「週3日、1日5時間のパート勤務」では基準を満たしません。こうした細かい要件を見落とすと、許認可が下りなくなります。
回避策:人員は基準+1名の余裕を持って確保しましょう。また、雇用契約書には「開業日までの勤務を確約する」旨の条項を入れておくと、直前辞退のリスクを減らせます。
落とし穴④消防設備の不備
消防法の基準は自治体や建物の構造によって異なり、非常に複雑です。スプリンクラーの設置義務がある場合、数百万円の追加コストが発生することもあります。
内装工事が完了してから消防署の検査で不備を指摘されると、やり直しで大幅なコスト増と時間のロスになります。
回避策:着工前に必ず所轄の消防署に事前相談に行きましょう。建物の図面を持参し、必要な消防設備を確認してもらいます。この一手間で、後々の大きなトラブルを防げます。
落とし穴⑤申請書類の不備・不足
指定申請では多くの書類が必要になります。よくある不備は以下の通りです。
- 職員の資格証明書の有効期限が切れている
- 運営規程の記載に漏れや誤りがある
- 建物の図面と実際の現地が一致していない
書類に不備があると補正指示が出され、再提出で1ヶ月程度遅延します。
回避策:申請前に行政書士またはFC本部の担当者にダブルチェックを依頼しましょう。特に運営規程は自治体ごとに記載すべき項目が異なるため、専門家のチェックが重要です。
落とし穴⑥申請締切日を逃す
多くの自治体では、申請締切日が月1回しかありません。例えば「毎月10日締切、翌月1日付で指定」といった形です。
締切を1日でも逃すと、開業が丸々1ヶ月遅れます。この1ヶ月の遅延で、家賃と人件費で数十万円から100万円以上の損失が発生することもあります。
回避策:自治体の締切日を早めに確認し、締切の2週間前を自分の〆切として設定しましょう。余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
落とし穴⑦自治体の実地検査で不適合
実地検査が行われる自治体では、現地で設備の不備を指摘されることがあります。よくある指摘は、段差の解消不足、手すりの設置位置の不適切さ、採光の不足などです。
指摘を受けると補正工事が必要になり、開業がさらに遅延します。
回避策:事前協議の段階で担当者に現地を見てもらうよう依頼しましょう(可能な自治体のみ)。早い段階で指摘事項を把握できれば、本申請までに対応できます。
許認可取得をスムーズにする5つの戦略
失敗のパターンを知ったところで、次は成功するための具体的な戦略を見ていきましょう。これらを実践すれば、許認可取得の成功率を大きく高められます。
戦略①開業6ヶ月前から自治体に相談に行く
指定申請の直前ではなく、開業の6ヶ月前から定期的に自治体の担当窓口に相談に行きましょう。
早期から関係を築いておくことで、疑問点をその都度解消できます。また、担当者があなたの事業に好意的になってくれれば、実地検査での指摘も減らせる可能性があります。
「毎月1回、進捗報告を兼ねて相談に行ったおかげで、担当者が味方になってくれた」という成功事例もあります。
戦略②物件は「許認可の専門家」と一緒に選ぶ
物件選定は、必ずFC本部の担当者、行政書士、または建築士に同行してもらいましょう。
チェックすべきポイントは以下の通りです。
- 用途地域は適合しているか
- 設備基準を満たす面積・間取りか
- 消防法の要件をクリアできるか
- バリアフリー化が可能か
また、賃貸借契約書に「許認可取得が困難な場合の解約条項」を入れておくと安心です。万が一許認可が下りなかった場合でも、敷金・礼金の一部を返還してもらえる可能性があります。
戦略③人材は「基準+1名」の余裕を持って確保
人員基準ギリギリの採用は非常に危険です。開業直前に1名でも辞退すれば、基準を満たせなくなり許認可が下りません。
基準+1名、できれば+2名の余裕を持って採用活動を進めましょう。特に看護師や機能訓練指導員は、非常勤でも構わないのでとにかく確保しておくことが重要です。
「基準+2名で採用していたおかげで、1名が辞退しても開業できた」という成功事例があります。余裕のある人員計画が、リスクヘッジになります。
戦略④FC本部の「許認可取得実績」を徹底確認
フランチャイズ本部を選ぶ際には、許認可取得の成功率を必ず確認しましょう。優良な本部であれば、過去の加盟者の95%以上が許認可を取得できているはずです。
確認すべき質問リストは以下の通りです。
- 過去の加盟者の許認可取得成功率は?
- 許認可が下りなかった事例はあるか?その理由は?
- 許認可取得専門の担当者がいるか?
- 申請書類の作成支援はどこまでしてくれるか?
- 自治体への同行サポートはあるか?
- 物件の紹介サービスはあるか?
- 人材紹介サービスはあるか?
- 許認可が下りなかった場合の返金保証はあるか?
- 開業が遅延した場合の費用負担はどうなるか?
- 実際に加盟したオーナーと話す機会を設けてもらえるか?
これらの質問に明確に答えられない本部は、サポート体制が不十分な可能性があります。
戦略⑤資金計画に「+3ヶ月分の運転資金」を上乗せ
どんなに綿密に計画しても、許認可取得が予定より遅れる可能性はあります。遅延期間中も家賃や人件費は発生し続けるため、資金計画に余裕を持たせることが重要です。
目安としては、+3ヶ月分の運転資金を上乗せしておきましょう。初期投資が1,500万円なら、+300~500万円の余裕資金を確保しておくと安心です。
「3ヶ月遅延で追加コスト400万円が発生したが、余裕資金があったおかげで乗り切れた」という事例もあります。資金不足による途中断念を避けるため、保守的な資金計画を立てましょう。
都道府県別の許認可難易度と特徴
デイサービスの許認可は都道府県または指定都市・中核市が行うため、開業エリアによって難易度が大きく異なります。主要都市の特徴を見ていきましょう。
東京都:事前協議が必須で慎重な審査(難易度★★★★)
東京都は全国でも最も審査が厳格なエリアの一つです。事前協議が必須で、この段階で物件や人員配置について詳細な確認が行われます。事前協議だけで1~2ヶ月を要します。
申請締切は毎月10日で、翌月1日付の指定となります。書類審査と実地検査の両方が行われ、少しでも不備があれば補正指示が出されます。
また、用途地域の制限も厳しく、物件探しに時間がかかる傾向があります。その分、開業後の競合状況や収益性は比較的安定していると言えます。
大阪府・愛知県:標準的な難易度(難易度★★★)
大阪府と愛知県は、事前協議は任意(推奨)ですが、申請から指定までは1.5~2ヶ月程度かかります。
申請締切は毎月15日前後で、翌月1日付の指定という自治体が多いようです。東京都ほど厳格ではありませんが、基準はしっかり確認されます。
物件の選択肢も比較的多く、標準的なスケジュール(10~12ヶ月)で開業できるケースが多いです。
福岡県・北海道:比較的スムーズ(難易度★★)
福岡県や北海道では、事前協議なしでも申請が可能です。審査期間も短めで、1~1.5ヶ月程度で指定されることが多いです。
物件の選択肢が比較的多く、用途地域の制限も都市部ほど厳しくありません。人材の採用難易度は地域によりますが、全体としては許認可プロセスはスムーズに進みやすいエリアと言えます。
開業エリア選定のポイント
開業エリアを選ぶ際には、許認可の難易度だけでなく、市場性とのバランスを考慮しましょう。
チェックすべきポイントは以下の通りです。
- 競合事業所数:厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で確認できます
- 高齢化率:将来的な利用者の見込み
- 要介護認定者数:実際のニーズの大きさ
- 許認可の難易度:開業までのスピードとリスク
「東京で物件探しに苦戦したため、隣接県で開業して成功した」という事例もあります。難易度の高いエリアにこだわりすぎず、柔軟に考えることも重要です。
よくある質問(FAQ)
ここでは、デイサービスフランチャイズの許認可に関してよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. 法人設立は自分でできますか?行政書士に頼むべき?
A: 法人設立は自分でも可能ですが、専門家に依頼する方が確実です。費用は10~15万円程度かかりますが、定款の事業目的欄に「介護保険法に基づく通所介護事業」を正確に記載するなど、専門知識が必要な部分もあります。
FC本部が提携している行政書士を紹介してくれるケースもあるので、まずは本部に相談してみましょう。時間と確実性を考えると、専門家への依頼をおすすめします。
Q2. 許認可が下りないことはありますか?その確率は?
A: 書類不備や基準未達の場合は不許可となることがあります。ただし、事前協議や準備を丁寧に行えば、ほぼ確実に取得できます。
FC本部のサポートがある場合、不許可率は推定で5%以下です。不許可の主な理由は、人員不足、設備基準の不適合、用途地域違反などです。これらは事前の確認で回避可能なものばかりです。
Q3. 開業準備中に給与収入はありますか?
A: 基本的に開業準備の8~12ヶ月間は無収入となります。そのため、生活費の確保が必須です。貯金で賄うか、副業を継続しながら準備を進める必要があります。
FC本部によっては、準備期間中のアルバイト先を紹介してくれるケースもあります。家族の理解を得て、資金計画をしっかり立てることが重要です。
Q4. 途中で断念した場合、どれくらい損失が出ますか?
A: 断念する段階によって損失額は異なります。
- 法人設立のみ:30~50万円
- 物件契約後:200~500万円(敷金・礼金・内装着手金)
- 人材採用後:500~800万円(給与・採用費)
FC加盟金の返金可否は契約内容次第なので、契約前に必ず確認しましょう。「許認可が下りなかった場合は全額返金」という条項があるFC本部もあります。
Q5. FC加盟せず独自開業の方が早いですか?
A: 許認可取得のノウハウがあれば、独自開業の方が早い可能性もあります。ただし、未経験者の場合、書類作成や自治体との折衝で苦戦することが多く、結果的にFC本部のサポートがある方が早いケースが多いです。
ロイヤリティを惜しんで時間を浪費し、結局開業が1年遅れたという事例もあります。時間コストも含めて総合的に判断しましょう。
Q6. 開業後すぐに利用者は来ますか?
A: 許認可取得と利用者獲得は別の問題です。開業時の目標は10~15名ですが、実際には5名以下でスタートすることも多いです。
ケアマネジャーへの営業と信頼構築には3~6ヶ月必要です。許認可準備と並行して、開業前から営業活動を開始することをおすすめします。
Q7. 許認可取得後、定期的な更新は必要ですか?
A: はい、指定は6年ごとの更新制です。更新申請は期限の3ヶ月前から可能で、更新時も人員基準・設備基準の確認が行われます。
また、運営実績(介護報酬の不正請求がないかなど)もチェック対象となります。日頃から適正な運営を心がけることが重要です。
まとめ:デイサービス許認可は「難しい」が「不可能ではない」
この記事では、デイサービスフランチャイズの許認可取得の難しさと準備期間について、実例を交えながら詳しく解説してきました。重要なポイントを3つにまとめます。
- 許認可の難易度は事実:法人格の取得、人員基準のクリア、設備基準を満たす物件探しの3つをすべてクリアする必要があり、準備期間は最低8ヶ月、余裕を持って12ヶ月を想定すべきです。物件探しと人材確保が最大の難関となります。
- 失敗パターンは明確:用途地域の確認不足、人材採用の甘さ、資金不足が主な失敗原因です。しかし、これらは事前準備と専門家の活用で回避可能です。FC本部や行政書士のサポートを最大限に活用しましょう。
- 成功の鍵は計画と余裕:開業6ヶ月前から自治体に相談し、物件は専門家と一緒に選定し、人員は基準プラス1名で確保し、資金は3ヶ月分の余裕を持たせる。FC本部の許認可実績(成功率95%以上)を必ず確認することが重要です。
次のステップとして、以下のアクションをおすすめします。
- 複数のFC本部の説明会に参加し、許認可サポートの具体的内容と過去の成功率・遅延事例を確認する
- 開業予定エリアの自治体窓口に一度相談に行き、申請フローや締切日、注意点をヒアリングする
- 実際に加盟したオーナーの体験談を聞き、リアルな準備期間と苦労した点を確認する
デイサービスの許認可は確かに複雑ですが、正しい知識と計画的な準備があれば未経験でも取得可能です。「難しいから諦める」のではなく、「難しいからこそ丁寧に準備する」という姿勢で臨みましょう。この記事が、あなたの開業準備の羅針盤となれば幸いです。

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