介護フランチャイズは保険報酬改定で収益悪化のリスクあり

「高齢化社会で需要は伸び続ける」と言われる介護フランチャイズですが、実際には収益悪化で撤退するオーナーも少なくありません。最大のリスクは、3年ごとに実施される保険報酬改定による収入減少です。この記事では、フランチャイズ探偵団が取材した実例をもとに、介護フランチャイズが失敗する3つの理由と、リスクを最小化するための具体的な対策を解説します。介護事業の特殊性を正しく理解した上で、参入判断の材料としてお役立てください。

  1. 介護フランチャイズが「儲からない」と言われる実態
    1. 介護事業の収益構造の特殊性
    2. 実際のオーナーが語る収益実態
  2. 保険報酬改定で収益悪化する3つの理由
    1. 理由①:報酬単価の引き下げが直接利益を圧迫
    2. 理由②:加算要件の厳格化でコスト増
    3. 理由③:競合増加による利用者獲得難
  3. 失敗する介護フランチャイズの3つの典型パターン
    1. パターン①:初期投資回収前に報酬改定が直撃
    2. パターン②:人材確保に失敗し人件費が高騰
    3. パターン③:地域のニーズ調査不足で空き発生
  4. 介護フランチャイズのリスクを最小化する5つの対策
    1. 対策①:報酬改定リスクを織り込んだ事業計画作成
    2. 対策②:加算取得の徹底で単価アップ
    3. 対策③:複数事業の組み合わせでリスク分散
    4. 対策④:本部のサポート体制を契約前に徹底確認
    5. 対策⑤:開業前の徹底した市場調査
  5. それでも介護フランチャイズを選ぶメリットはあるのか?
    1. 需要の安定性と社会貢献性
    2. FC本部のノウハウ活用で参入障壁を下げられる
    3. こんな人には向いている・向いていない
  6. 介護以外の選択肢との比較検討も重要
    1. 他の高齢者向けビジネス(保険外)
    2. 全く違う業種のフランチャイズ
  7. よくある質問(FAQ)と回答
    1. Q1. 保険報酬改定はどのくらいの頻度で起きるのですか?
    2. Q2. 報酬改定で実際にどのくらい収益が変わるのですか?
    3. Q3. FC加盟せず、独自で開業する選択肢もありますか?
    4. Q4. 今から参入するのは遅すぎませんか?
    5. Q5. 初期投資はどのくらい必要ですか?
  8. まとめ

介護フランチャイズが「儲からない」と言われる実態

介護フランチャイズに対して「需要があるから儲かる」というイメージを持つ方は多いですが、実際の収益性は一般的なフランチャイズビジネスと比べて低水準です。ここでは、数字とデータをもとに介護フランチャイズの収益実態を明らかにします。

厚生労働省の「介護事業経営概況調査」によると、訪問介護事業所の平均営業利益率は約3.3%、通所介護(デイサービス)でも約5.7%という水準です。これは、コンビニフランチャイズの平均営業利益率10-15%や、飲食フランチャイズの8-12%と比較すると、明らかに低い数字と言えます。

さらに、東京商工リサーチの調査では、介護事業者の倒産件数は2023年に過去最多を記録しており、業界全体が厳しい経営環境に置かれていることがわかります。「需要がある=儲かる」という単純な図式が成り立たないのが、介護ビジネスの現実なのです。

介護事業の収益構造の特殊性

介護フランチャイズが儲かりにくい最大の理由は、収益構造の特殊性にあります。一般的なビジネスとは異なり、以下のような制約があるためです。

  • 売上の大部分が保険報酬:収入の約9割が介護保険からの報酬で、国の制度に完全に依存
  • 価格設定の自由がない:サービス単価は国が定めた報酬単価で固定されており、独自の価格設定ができない
  • 利用者負担は1-2割程度:残りは保険から支払われるため、利用者のニーズと収益性が必ずしも一致しない
  • 人件費比率が高い:労働集約型ビジネスのため、売上の60-70%が人件費となる

つまり、介護フランチャイズは「努力や工夫で売上を伸ばす」という一般的なビジネス戦略が通用しにくく、国の政策変更によって収益が大きく左右されるという構造的な問題を抱えているのです。

実際のオーナーが語る収益実態

フランチャイズ探偵団が取材した訪問介護フランチャイズのオーナーAさん(開業3年目)は、次のように語っています。

「開業時の事業計画では月商200万円、営業利益30万円を想定していましたが、実際には月商180万円、営業利益は15万円程度です。人材採用コストが想定の1.5倍かかったことと、開業2年目に保険報酬改定があり、1件あたりの単価が下がったことが大きな要因です」

開業初年度から3年目までの収支推移を見ると、以下のようなパターンが典型的です:

  • 1年目:利用者獲得に苦戦、営業赤字または微益
  • 2年目:利用者が安定し始め、ようやく黒字化
  • 3年目:保険報酬改定の影響で収益が悪化、または人件費高騰で利益圧迫

YouTube「フランチャイズ探偵団」のチャンネルでは、実際のオーナーへのインタビュー動画を多数公開しており、生の声から現実的な収益感をつかむことができます。

保険報酬改定で収益悪化する3つの理由

介護フランチャイズにおける最大のリスク要因が、3年ごとに実施される保険報酬改定です。この制度改定によって、多くの事業者が収益悪化に直面しています。ここでは、報酬改定が収益を圧迫する3つの具体的な理由を解説します。

保険報酬改定とは、介護サービスの価格(報酬単価)を国が3年ごとに見直す制度です。高齢化の進展による介護給付費の増加を抑制するため、近年はマイナス改定(報酬引き下げ)の傾向が続いています。直近の改定では以下のような変更が行われました:

  • 2021年改定:全体で+0.70%(実質的には処遇改善分を除くとマイナス)
  • 2024年改定:全体で+1.59%(ただし基本報酬は一部引き下げ、加算で調整)

理由①:報酬単価の引き下げが直接利益を圧迫

最も直接的な影響は、サービス提供1回あたりの報酬単価が引き下げられることです。2024年の改定では、以下のような変更がありました。

訪問介護の場合:

  • 身体介護(20分以上30分未満):改定前2,530円 → 改定後2,480円(▲50円)
  • 生活援助(20分以上45分未満):改定前1,830円 → 改定後1,800円(▲30円)

通所介護(デイサービス)の場合:

  • 要介護3(7時間以上8時間未満):改定前10,150円 → 改定後10,050円(▲100円)
  • 要介護5(同上):改定前14,230円 → 改定後14,080円(▲150円)

一見すると数十円から百円程度の変化に見えますが、これが積み重なると大きな影響となります。例えば、月間利用者50名、1人あたり月20回利用の訪問介護事業所の場合:

  • 50名 × 20回 × 50円 = 月間5万円の減収
  • 年間では60万円の減収

営業利益率が5%程度の事業所の場合、この減収をカバーするには年間1,200万円の売上増が必要となり、現実的には非常に困難です。

理由②:加算要件の厳格化でコスト増

報酬単価の引き下げに加えて、加算取得の条件が厳しくなることも収益悪化の要因です。加算とは、一定の条件を満たした事業所に対して上乗せされる報酬のことですが、その取得条件が年々複雑化・厳格化しています。

例えば、2024年改定では以下のような変更がありました:

  • 処遇改善加算:職員の給与アップを条件とする加算だが、取得のための書類作成や報告義務が増加
  • 特定事業所加算:人員配置基準が引き上げられ、常勤職員の割合や資格保有者の配置要件が厳格化
  • サービス提供体制強化加算:介護福祉士の配置割合の要件が引き上げ

これらの加算を取得するためには、人件費の増加(より高資格者の採用、給与アップ)やシステム投資(勤怠管理システム、記録管理システム)、事務作業の増加(書類作成、報告業務)といったコストが発生します。

実際に、ある通所介護事業所では、特定事業所加算を取得するために常勤の介護福祉士を2名追加採用した結果、月額人件費が40万円増加しました。加算による増収は月25万円程度だったため、実質的には収益が悪化したというケースもあります。

理由③:競合増加による利用者獲得難

保険報酬改定後は、収益悪化に耐えられない事業者が撤退する一方で、「高齢化市場は有望」と考える新規参入者も存在します。その結果、地域内での競合が激化し、利用者獲得が以前よりも困難になっています。

特に都市部では、以下のような競争環境が生まれています:

  • 半径2km圏内に同業種の事業所が10か所以上
  • ケアマネージャーへの営業活動が激化
  • 利用者獲得のための過度なサービス競争(送迎範囲の拡大、イベントの充実など)

介護サービスの利用は、ケアマネージャーの紹介に大きく依存しています。ケアマネージャーとの良好な関係構築ができていない事業所は、報酬改定後の厳しい環境下で利用者確保に苦戦し、稼働率の低下による収益悪化に直面します。

さらに、政府が推進する地域包括ケアシステムにより、地域内での連携・競争がより一層重要になっており、単に「サービスを提供すれば利用者が来る」という時代ではなくなっているのです。

失敗する介護フランチャイズの3つの典型パターン

ここまで保険報酬改定のリスクを解説してきましたが、実際に失敗する介護フランチャイズには共通のパターンが存在します。フランチャイズ探偵団の取材や業界データをもとに、代表的な3つの失敗パターンを紹介します。

パターン①:初期投資回収前に報酬改定が直撃

【ケーススタディ】Bさん(通所介護フランチャイズ、開業2年目)

Bさんは、初期投資2,500万円(物件取得・内装工事・フランチャイズ加盟金)で通所介護事業を開業しました。事業計画では、月商350万円、営業利益50万円、投資回収期間5年を想定していましたが、開業2年目に保険報酬改定が実施されました。

改定により、月商が10%(35万円)減少。固定費は変わらないため、営業利益は50万円から15万円に激減しました。さらに、加算取得のために追加人員を配置した結果、利益はほぼゼロに。融資の返済計画が大きく狂い、自己資金を切り崩す状態が続いています。

この失敗の原因は以下の点にあります:

  • 報酬改定リスクを事業計画に織り込んでいなかった:余裕のない収支計画で、変動要因を考慮せず
  • 自己資金比率が低かった:初期投資の8割を融資に依存し、柔軟性がなかった
  • FC本部のサポートが不十分:報酬改定後の経営改善策について具体的なアドバイスがなかった

パターン②:人材確保に失敗し人件費が高騰

【ケーススタディ】Cさん(訪問介護フランチャイズ、開業3年目)

Cさんは、訪問介護フランチャイズに加盟し、当初は順調に利用者を獲得していました。しかし、慢性的な人手不足により、以下のような問題に直面しました:

  • 求人広告費が想定の2倍(月15万円→30万円)に
  • 応募があっても定着せず、常に欠員状態
  • やむなく派遣スタッフに依存し、時給が正社員の1.5倍に
  • 結果として、人件費比率が75%まで上昇

訪問介護の場合、サービス提供時間に対して報酬が支払われるため、スタッフの稼働率が収益に直結します。しかし、人材不足により十分な稼働ができず、売上も伸びない悪循環に陥りました。

この失敗の原因:

  • 人材確保の困難さを甘く見ていた:「募集すれば人は来る」という楽観的な見通し
  • 労働条件の競争力不足:周辺の同業他社より給与水準が低く、選ばれない
  • 定着率向上の施策がなかった:採用後のフォロー体制が不十分

パターン③:地域のニーズ調査不足で空き発生

【ケーススタディ】Dさん(デイサービスフランチャイズ、開業1年で撤退)

Dさんは、「高齢者人口が多い」という理由だけで立地を選定し、デイサービスを開業しました。しかし、開業後に以下の問題が判明しました:

  • 半径1km圏内に同業種の事業所が既に8か所
  • 近隣の大手事業所が送迎範囲を広くカバーしており、競合優位性がない
  • 想定していた要介護度の高い利用者は、実際には施設入所を選ぶケースが多い
  • 結果として、定員20名に対して平均利用者は10名、稼働率50%で慢性的な赤字

デイサービスは固定費(家賃、人件費)が高いビジネスモデルのため、稼働率が80%を下回ると利益が出にくくなります。Dさんは開業1年で撤退を決断し、初期投資の大部分を失いました。

この失敗の原因:

  • 競合調査が不十分:高齢者人口だけで判断し、既存事業所の状況を把握していなかった
  • ケアマネージャーへのヒアリング不足:実際のニーズ(要介護度、サービス内容)を理解していなかった
  • 「需要がある=稼げる」という誤解:需要があっても、競合に勝てなければ意味がない

業界団体の調査によると、介護事業の廃業理由の上位3つは「収益悪化(45%)」「人材不足(30%)」「競合激化(15%)」となっており、上記の3パターンがいかに典型的かがわかります。

介護フランチャイズのリスクを最小化する5つの対策

ここまで失敗パターンを見てきましたが、全ての介護フランチャイズが失敗するわけではありません。リスクを正しく理解し、適切な対策を講じることで、失敗確率を大幅に下げることが可能です。ここでは、優先度の高い順に5つの具体的な対策を紹介します。

対策①:報酬改定リスクを織り込んだ事業計画作成

最も重要な対策は、保険報酬改定で▲10%の減収があっても耐えられる事業計画を立てることです。具体的には以下のポイントを押さえてください。

  • 自己資金比率を高める:初期投資の最低3割、できれば5割を自己資金で賄う。融資返済負担を減らすことで、収益変動への耐性を高める
  • 固定費を抑える:家賃は月商の10%以内に抑える。フランチャイズ加盟金やロイヤリティも交渉の余地があるか確認
  • 損益分岐点を低く設定:稼働率70%で黒字化できる水準を目指す(多くの事業所は稼働率80%以上が前提)
  • 3年ごとの改定を想定:事業計画の3年目、6年目に10%の減収を織り込んだシミュレーションを作成

例えば、月商300万円、営業利益率10%の事業所の場合:

項目 改定前 改定後(▲10%)
月商 300万円 270万円
営業利益 30万円 0万円

このように、利益率10%でも改定で利益がゼロになる可能性があります。利益率15%以上を目標にすることで、改定後も5%程度の利益を確保できます。

対策②:加算取得の徹底で単価アップ

報酬改定によるマイナス影響を補うためには、各種加算を確実に取得し、サービス単価を高める戦略が有効です。ただし、コストパフォーマンスの良い加算を優先的に取得することが重要です。

取得しやすく効果の高い加算(優先度順):

  1. 処遇改善加算(最優先):職員の処遇改善を行うことで、基本報酬の5-15%程度を上乗せ。ほぼ全ての事業所が取得可能
  2. サービス提供体制強化加算:介護福祉士の配置割合で決まる。1-2名の有資格者採用で取得可能
  3. 中重度者ケア体制加算(通所介護):要介護3以上の利用者割合で判定。地域のニーズに合えば効果大
  4. 特定事業所加算(訪問介護):人員配置基準が厳しいが、報酬単価が20%アップするため長期的には有効

加算取得による収益改善シミュレーション:

通所介護(定員20名、平均稼働率85%)の例:

加算の種類 月額増収 年間増収
処遇改善加算Ⅰ 約15万円 約180万円
サービス提供体制強化加算Ⅰ 約8万円 約96万円
中重度者ケア体制加算 約5万円 約60万円
合計 約28万円 約336万円

加算取得により、年間300万円以上の増収が見込めます。ただし、処遇改善加算は職員への還元が必須なので、実質的な利益増は200万円程度となります。それでも、報酬改定による減収(前述の例では年間60万円)を十分にカバーできます。

対策③:複数事業の組み合わせでリスク分散

単一の介護サービスだけに依存せず、複数の事業を組み合わせることでリスクを分散する戦略も有効です。ただし、フランチャイズ契約によっては他事業の展開が制限される場合があるため、契約前の確認が必須です。

効果的な事業の組み合わせ例:

  • 訪問介護 + 福祉用具レンタル:既存の利用者に対して福祉用具を提案。初期投資が少なく、利益率も高い(20-30%)
  • 通所介護 + 訪問介護:同じ地域で複数サービスを提供することで、ケアマネージャーからの信頼度向上
  • 保険サービス + 自費サービス:保険適用外の家事代行、配食サービスなどを併設。価格設定の自由度が高く、利益率向上

【注意点】:

  • フランチャイズ契約で「競業避止義務」が設定されている場合、他事業展開が制限される可能性
  • 複数事業を同時に立ち上げるのではなく、主力事業が安定してから段階的に展開
  • 人材確保がさらに困難になる可能性があるため、採用計画も慎重に

対策④:本部のサポート体制を契約前に徹底確認

フランチャイズ加盟の最大のメリットは、本部のノウハウとサポートを活用できることです。しかし、介護フランチャイズの場合、報酬改定への対応力が本部の真価を問われるポイントとなります。

契約前に必ず確認すべきサポート内容:

  1. 報酬改定時の経営支援実績
    • 過去の改定時に、加盟店に対してどのような支援を行ったか
    • 改定後の加盟店の収益変化データ(改善率など)
    • 具体的な改善事例の有無
  2. 加算取得のノウハウ提供
    • 加算取得のための具体的なマニュアルや研修の有無
    • 申請書類作成のサポート体制
    • 本部全体での加算取得率(高いほど本部のノウハウが豊富)
  3. 人材採用サポートの具体的内容
    • 求人媒体の推奨や割引制度
    • 面接・採用のノウハウ提供
    • 定着率向上のための研修プログラム
  4. 定期的な経営相談・訪問頻度
    • スーパーバイザーの訪問頻度(最低月1回が望ましい)
    • 緊急時の相談窓口の有無
    • 他加盟店との情報交換会の開催

これらの確認を怠ると、「加盟金だけ取られて、困った時に助けてもらえない」という事態に陥る可能性があります。既存加盟店への直接ヒアリングも、本部選びの重要な判断材料となります。

対策⑤:開業前の徹底した市場調査

失敗パターン③で紹介したように、地域のニーズと競合状況を把握せずに開業することは、最も避けるべきリスクです。以下のチェックリストに沿って、徹底的な市場調査を行ってください。

市場調査チェックリスト:

  1. 地域の高齢者人口と要介護認定者数
    • 市区町村の公式サイトで「高齢者人口推移」「要介護認定者数」を確認
    • 今後10年間の人口予測も確認
  2. 競合事業所のマッピング
    • 半径2-3km圏内の同業種事業所を全てリストアップ
    • 各事業所の定員、サービス内容、強み・弱みを調査
    • 「介護サービス情報公表システム」で詳細情報を取得可能
  3. ケアマネージャーへのヒアリング
    • 地域の居宅介護支援事業所(ケアマネ事務所)を10か所以上訪問
    • 「どんなサービスが不足しているか」「どんな事業所なら紹介したいか」を直接聞く
    • これが最も重要な調査項目
  4. 地域のニーズの質的調査
    • 要介護度の分布(軽度中心か、重度中心か)
    • 認知症高齢者の割合
    • 独居高齢者の割合
  5. アクセス・立地条件
    • 送迎の場合、主要な住宅地からの距離
    • 駐車場の確保(送迎車両分)
    • 公共交通機関の利便性

これらの調査には1-2か月程度かかりますが、開業後の失敗リスクを大幅に下げるための最も重要な投資です。急いで開業するよりも、じっくりと調査してから判断することをおすすめします。

それでも介護フランチャイズを選ぶメリットはあるのか?

ここまで介護フランチャイズのリスクと対策を中心に解説してきましたが、もちろんメリットも存在します。リスクだけを見て「絶対にやめるべき」と判断するのではなく、メリットとデメリットを天秤にかけた上で、自分に向いているかを判断することが重要です。

需要の安定性と社会貢献性

介護ビジネスの最大のメリットは、需要の安定性と将来性です。内閣府の「高齢社会白書」によると、日本の高齢化率(65歳以上人口の割合)は以下のように推移すると予測されています:

  • 2020年:28.6%
  • 2030年:31.2%
  • 2040年:35.3%
  • 2065年:38.4%

高齢者人口が増え続ける限り、介護サービスの需要が大きく減少することはありません。景気に左右されにくく、不況時でも一定の需要が見込めるという安定性があります。

また、地域に必要とされるビジネスとしての社会貢献性も、他の業種にはない大きな魅力です。利用者やその家族から直接感謝される機会が多く、「やりがい」を感じられる仕事と言えます。

ただし、ここで重要なのは「需要がある」ことと「儲かる」ことは別だという認識です。需要があっても、競合が多ければ稼働率は上がりませんし、報酬単価が低ければ利益は出ません。需要の安定性を過信せず、現実的な収益予測を立てることが必須です。

FC本部のノウハウ活用で参入障壁を下げられる

介護事業を独自で開業する場合、以下のような煩雑な手続きや専門知識が必要となります:

  • 介護保険指定事業者の申請:都道府県への申請書類作成、基準の理解
  • 人員配置基準の遵守:管理者、サービス提供責任者などの配置
  • 加算取得のノウハウ:複雑な要件を理解し、適切に申請
  • ケアマネージャーとの関係構築:地域でのネットワーク作り

フランチャイズに加盟することで、これらの専門的なノウハウを本部から提供してもらえるため、未経験者でも参入しやすくなります。また、既存のブランド力を活用できることで、開業初期の信頼獲得がスムーズになるケースもあります。

ただし、これはあくまで「良い本部」を選んだ場合の話です。前述の通り、本部のサポート体制を事前に徹底確認することが大前提となります。

こんな人には向いている・向いていない

最後に、介護フランチャイズに向いている人・向いていない人の特徴を整理します。

【向いている人】:

  • 介護業界の経験・知識がある:ヘルパーや介護福祉士として現場経験がある、または家族の介護経験がある
  • 長期的視点で事業を考えられる:5-10年スパンで投資回収を考え、短期的な利益にこだわらない
  • 地域密着型の経営が好き:地域の人との関係構築を楽しめる、社会貢献意識が高い
  • 数字と制度の管理が得意:報酬改定や加算要件などの細かい制度変更に対応できる
  • 人材マネジメント力がある:スタッフの採用・育成・定着に自信がある

【向いていない人】:

  • 短期間で大きく稼ぎたい:初期投資を2-3年で回収したい、年収1,000万円以上を目指したい
  • 数字・制度の管理が苦手:報酬計算や加算申請などの事務作業が苦痛
  • 人材マネジメントに自信がない:スタッフとのコミュニケーションや採用活動が苦手
  • 制度変更への対応が苦痛:3年ごとの報酬改定に振り回されるのが嫌
  • 独自性を重視したい:価格設定やサービス内容を自由に決めたい

自分がどちらのタイプに近いかを冷静に判断し、向いていないと感じる場合は、他の選択肢を検討することをおすすめします。

介護以外の選択肢との比較検討も重要

介護フランチャイズへの参入を検討する際、「介護一択」で考えるのではなく、他の選択肢との比較も重要です。ここでは、介護以外の高齢者向けビジネスや、全く違う業種のフランチャイズとの比較を行います。

他の高齢者向けビジネス(保険外)

介護保険に依存しない、保険外の高齢者向けサービスも選択肢の一つです。主なビジネスモデルは以下の通りです:

  • 高齢者向け配食サービス
    • 初期投資:300-800万円
    • メリット:価格設定の自由度が高い、報酬改定リスクなし
    • デメリット:集客力が必要、食品衛生管理の手間
  • 家事代行・生活支援サービス
    • 初期投資:100-500万円
    • メリット:低資本で開業可能、サービスの柔軟性が高い
    • デメリット:競合が多い、単価が低い
  • 見守りサービス(IoT活用)
    • 初期投資:200-600万円
    • メリット:人手不足の影響を受けにくい、将来性が高い
    • デメリット:技術的なノウハウが必要、市場がまだ小さい

これらの保険外サービスは、価格設定の自由度が高く、利益率も15-25%程度と介護保険サービスより高い傾向にあります。ただし、利用者を自力で獲得する必要があり、マーケティング力が求められます。

全く違う業種のフランチャイズ

「高齢化市場」にこだわらず、他業種のフランチャイズとの比較も検討する価値があります。

業種別比較表:

業種 初期投資 平均営業利益率 投資回収期間 主なリスク
介護フランチャイズ 500-3,000万円 3-8% 5-10年 報酬改定、人材不足
ハウスクリーニング 100-300万円 10-20% 2-4年 競合多、肉体労働
コンビニ 1,500-3,000万円 5-10% 7-12年 長時間労働、本部依存
学習塾 500-1,500万円 8-15% 3-6年 少子化、講師確保
飲食(テイクアウト) 800-2,000万円 5-12% 4-7年 食材高騰、競合多

この表から分かる通り、介護フランチャイズは初期投資が高く、利益率が低く、投資回収期間が長いという特徴があります。純粋に収益性だけを考えるなら、ハウスクリーニングや学習塾の方が有利と言えます。

しかし、「なぜ介護を選ぶのか」を明確にすることが重要です。社会貢献性、需要の安定性、やりがいなど、お金以外の価値を重視するのであれば、介護フランチャイズは魅力的な選択肢となります。

YouTube「フランチャイズ探偵団」では、様々な業種のオーナーインタビューを公開しており、リアルな比較材料として参考になります。

よくある質問(FAQ)と回答

介護フランチャイズに関して、読者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q1. 保険報酬改定はどのくらいの頻度で起きるのですか?

保険報酬改定は3年に1回、4月に実施されます。直近の改定は2024年4月で、次回は2027年4月の予定です。改定内容は前年の秋頃(10-12月)に厚生労働省の審議会で議論され、翌年1-2月に正式に公表されます。

改定の方向性(プラス改定かマイナス改定か)は、政府の財政状況や介護給付費の伸び率によって決まります。近年は高齢化による給付費増加を抑制する方向性が強く、実質的なマイナス改定が続いています。

事業者としては、3年ごとに収益構造が変わる可能性があることを前提に、柔軟な経営計画を立てる必要があります。

Q2. 報酬改定で実際にどのくらい収益が変わるのですか?

報酬改定の影響は、事業形態やサービス内容によって大きく異なります。一般的な影響の目安は以下の通りです:

  • 訪問介護:▲5〜10%の影響を受けるケースが多い(基本報酬の削減、加算要件の厳格化)
  • 通所介護(デイサービス):▲3〜7%程度の影響(大規模事業所ほど引き下げ幅が大きい傾向)
  • 訪問看護・リハビリ:比較的影響が小さい(▲2〜5%程度)
  • 施設系(特養、老健など):▲1〜4%程度と比較的安定

2024年改定では、全体としてはプラス改定(+1.59%)でしたが、これは処遇改善加算の拡充分が大きく、基本報酬は多くのサービスで引き下げられました。つまり、加算を取得しなければ減収になるという構造です。

具体的な影響額は、月商300万円の訪問介護事業所で年間50-100万円程度の減収というケースが報告されています。

Q3. FC加盟せず、独自で開業する選択肢もありますか?

はい、独自開業は可能です。介護事業を始めるには、都道府県から「介護保険指定事業者」の指定を受ける必要がありますが、フランチャイズ加盟は必須ではありません。

独自開業のメリット:

  • フランチャイズ加盟金(100-300万円)が不要
  • ロイヤリティ負担がない(月商の3-8%程度が節約できる)
  • 経営の自由度が高い(他事業との組み合わせなど)

独自開業のデメリット:

  • 指定申請の手続きを全て自分で行う必要(行政書士に依頼すると20-50万円)
  • 加算取得のノウハウがなく、収益を最大化しにくい
  • ケアマネージャーとの関係構築を一から行う必要
  • ブランド力がなく、初期の信頼獲得に時間がかかる

介護業界の経験が豊富で、地域に人脈がある場合は独自開業も選択肢となります。一方、未経験の場合は、フランチャイズのノウハウとサポートを活用する方が失敗リスクは低いと言えます。

独自開業かFC加盟かの判断は、「加盟金・ロイヤリティのコスト」と「本部のサポート価値」を天秤にかけて行いましょう。

Q4. 今から参入するのは遅すぎませんか?

結論から言うと、需要面では決して遅くありません。高齢者人口は2040年頃までピークを迎え続けるため、少なくとも今後15-20年は需要が伸び続けます。

ただし、競争環境は年々厳しくなっており、「参入すれば儲かる」という時代は終わったと認識すべきです。以下の点が重要になっています:

  • 差別化戦略:単に「介護サービスを提供する」だけでは選ばれない。特定の要介護度やサービス内容に特化するなど
  • 地域選定の重要性:都市部は競合が激しいが、地方では人材確保が困難。バランスの取れた地域選びが重要
  • 複合的なサービス提供:単一サービスではなく、複数の事業を組み合わせた総合力で勝負

地域によっては、まだ競合が少ない「ブルーオーシャン」も存在します。徹底した市場調査を行い、競争優位性を持てる地域・サービスを見つけることができれば、今からでも十分に参入価値はあります。

Q5. 初期投資はどのくらい必要ですか?

初期投資額は、事業形態によって大きく異なります。一般的な目安は以下の通りです:

訪問介護の場合:500-1,000万円

  • 物件取得費(事務所):50-150万円
  • 内装工事・設備:50-100万円
  • 車両購入:100-200万円
  • フランチャイズ加盟金:100-300万円
  • 運転資金(3-6か月分):200-250万円

通所介護(デイサービス)の場合:1,500-3,000万円

  • 物件取得費:300-800万円
  • 内装工事・設備:500-1,200万円
  • 送迎車両:200-400万円
  • フランチャイズ加盟金:200-400万円
  • 運転資金(6か月分):300-500万円

フランチャイズ加盟料の相場:

  • 初期加盟金:100-300万円
  • 月額ロイヤリティ:月商の3-8%(または固定額5-15万円)
  • 研修費:30-80万円

自己資金は、初期投資の最低3割、できれば5割を用意することが推奨されます。融資に頼りすぎると、返済負担が重く、報酬改定などの収益変動に耐えられなくなります。

まとめ

介護フランチャイズは、高齢化社会において需要が安定している一方で、保険報酬改定による収益変動リスクという大きな課題を抱えています。この記事で解説した重要なポイントを改めて整理します。

  1. リスク認識が最重要:介護フランチャイズは、3年ごとの保険報酬改定により収益が5-10%変動する可能性があることを必ず理解してください。「需要がある=儲かる」という単純な図式は成り立ちません。
  2. 対策は存在する:報酬改定リスクを織り込んだ余裕ある事業計画、加算取得の徹底、徹底した市場調査により、失敗確率は大幅に下げることができます。特に、自己資金比率を高め、固定費を抑えることが重要です。
  3. 向き不向きを見極める:長期的視点で事業を考えられ、地域貢献や社会的意義を重視する方には向いています。一方、短期間で大きく稼ぎたい方や、制度変更への対応が苦手な方には向いていません。

介護フランチャイズへの参入を検討される方は、まずYouTube「フランチャイズ探偵団」で実際のオーナーの生の声を確認することをおすすめします。また、他業種との比較検討記事も参考に、自分にとって最適な選択を行ってください。

リスクを正しく理解し、適切な準備と対策を講じることで、介護フランチャイズは社会に貢献しながら安定した収益を得られるビジネスとなります。慎重に検討し、納得のいく意思決定をしてください。

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